自社のホームページやチラシに載せる一行が、どうしても「高品質・低価格・安心のサービス」のような言葉に落ち着いてしまう。そんな悩みはありませんか。キャッチコピーは感性やセンスで決まるものだと思われがちですが、実際には手順のある作業です。この記事では、中小企業がひとりでも進められるキャッチコピーの作り方を、5つのステップに分けて解説します。
ステップ1:キャッチコピーの作り方は「誰に」を決めることから始まる
最初にやるべきは、言葉を考えることではなく、読み手をひとりに絞ることです。「30〜50代の女性」では範囲が広すぎます。「共働きで帰宅が19時を過ぎ、夕食づくりを15分で終わらせたい母親」まで具体化すると、使うべき言葉が自然に決まってきます。
ターゲットが曖昧なまま言葉を探すと、誰にも引っかからない無難な表現になります。逆に対象を狭めると「自分のことだ」と感じてもらえる確率が上がります。読み手像の描き方は顧客インタビューのやり方も参考にしてください。既存のお客様が自社を選んだ理由を聞くだけで、使える言葉のストックが一気に増えます。
ステップ2:機能ではなく「ベネフィット」を洗い出す
次に、商品やサービスの特徴を書き出し、それぞれを「お客様にとってどう良いのか」に言い換えます。これがベネフィット(便益)です。
- 特徴:国産材を使った家具 → ベネフィット:20年後も使える、子どもに残せる
- 特徴:24時間対応の修理 → ベネフィット:深夜のトラブルでも明日の営業を止めない
- 特徴:創業60年 → ベネフィット:前任の担当者がいなくても履歴が残っている
コツは、特徴に対して「だから何が嬉しいのか」を3回繰り返して掘ることです。10〜20個書き出すと、競合が言っていない表現が必ず1つか2つ混ざります。この作業は自社の強みの整理そのものなので、ブランドポジショニングの検討と並行して進めると効率が良くなります。
ステップ3:一行に絞り込む(文字数と3つの型)
洗い出したベネフィットから、最も強い1つだけを選びます。2つ以上詰め込むと記憶に残りません。文字数の目安は、ウェブサイトの見出しなら15〜30文字程度、チラシや看板なら10〜15文字程度です。スマートフォンでは1行に入る文字数が限られるため、短いほうが有利です。
迷ったら次の3つの型に当てはめてみてください。
- 数字型:「夕食の準備を15分に」。「時短」より具体的で、信頼性も伝わります
- 問いかけ型:「その見積書、他社と比べましたか」。読み手の思考を止めます
- ビフォーアフター型:「棚の奥で眠っていた在庫が、今月の売上に」
同じベネフィットでも型を変えれば10案は出せます。最初から名作を狙わず、量を出してから選ぶほうが確実です。
ステップ4:声に出して読み、第三者に見せて検証する
候補が絞れたら、必ず声に出して読みます。読みにくい、息継ぎが必要、漢字が多くて硬い——こうした問題は黙読では気づけません。
次に、業界の外にいる人に3秒だけ見せて「何の会社だと思った?」と尋ねます。業界用語や社内の言い回しは、社外の人には意味が届きません。「最適化されたソリューション」のような言葉が残っていたら要注意です。
実際に使い始めたあとは、ウェブサイトなら2つの案を期間を分けて掲載し、問い合わせ件数を比べる方法もあります。判断を感覚に委ねず、数字で確かめられる形にしておくことが大切です。
ステップ5:使う場所ごとに言い換え、軸はそろえる
キャッチコピーは1つ作って終わりではありません。ウェブサイトのトップ、名刺、チラシ、SNSのプロフィールでは、それぞれ必要な長さや役割が違います。
そこで、中心となる一行を決めたうえで、長さの違う言い換えを3種類用意しておきます。たとえば「8文字版(看板用)」「20文字版(サイト見出し用)」「60文字版(会社紹介用)」です。表現は変わっても、伝えている価値は同じにそろえます。
この「軸をそろえる」作業を文書化しておくと、担当者が変わっても発信がぶれません。詳しい手順はブランドガイドラインの作り方で解説しています。
まとめ:キャッチコピーの作り方は手順で再現できる
ここまでの5ステップを整理します。
- 読み手をひとりに絞る
- 特徴をベネフィットに言い換えて10〜20個出す
- 最も強い1つを選び、型に当てはめて一行にする
- 声に出して読み、業界外の人に3秒見せて検証する
- 長さの違う言い換えを用意し、伝える価値をそろえる
キャッチコピーの作り方で最も時間をかけるべきは、言葉を磨く工程ではなく、ステップ1と2です。誰に何を伝えるかが決まっていれば、表現は後から何度でも直せます。
10月からの下期に向けて販促物を作り直す会社も多い時期です。まずは自社の特徴を紙に10個書き出し、それぞれを「だからお客様にとって何が嬉しいのか」に言い換える作業から始めてみてください。30分で、使える言葉の原石がいくつか見つかるはずです。